スキャナーの速度比較
1200dpiのモノクロスキャンを多用する機会が増えたので、能率アップのため4年振りにスキャナーを買ってみた。
ところが思わぬ落とし穴にはまってしまった。
新しく買ったスキャナーの方が、遅いのだ。これはいったいなぜか?
そんなきっかけで、スキャナー読み取り速度比較が、始まってしまった。
メーカーが発表する、スキャナの読み取り速度のカタログデータは、わかりにくい。
例えば、
4.1msec/line(600dpi)
このように書いてある。
これは、600dpiでスキャンしたときに、1ドット読み取るのに4.1ミリ秒(1/1000秒)かかるということを現している。
これでは専門的すぎて、実際に使用したときにかかる時間などで示してくれなければ、わかりにくい。
しかも、各メーカー、機種で、測定したdpiがバラバラなので、さらに比較しにくい。
こういうところを、規格統一して、公表して欲しいものだ。
そこで、スキャナー読み取り速度のカタログデータを、A4サイズの取り込みに要する時間に変換して比べてみることにする。
計算式
A4サイズの原稿をスキャンするのにかかる時間
=297ミリ(A4の大きさ)/25.4(1インチ)×カタログデータのdpi×カタログデータのmsec/1000(単位を秒数に)
カタログに
4.1msec/line(600dpi)
と書いてあれば、
297/25.4*600*4.1/1000=28.8秒
と、かなりわかりやすい数字になる。A4原稿を600dpiで読み込むのに、28.8秒かかるということになる。
各社のカタログデータから、この計算で得た結果を表にまとめてみた。
実際に自分で所有しているものについては、実測値を乗せてみた。
環境は、セレロン2.8Gメモリ512MHD80GでWinXP SP2。
スキャンソフトを立ち上げ、スキャンボタンを押した瞬間から、スキャンが開始され、スキャンヘッドが読み込みを終了し、戻り始めるまでを測定した。
モードはモノクロである。
カタログから予想されるスキャナーの読み取り速度 A4モノクロ原稿の場合
スキャナー機種名 | 1200dpi | 600dpi | 300dpi |
キャノンD1230U4年間使ったもの。 | 予備動作33秒+107秒 | 予備動作33秒+56秒 | 予備動作33秒+17秒 |
キャノン8400FV今回購入したもの。 | カタログ202秒(1600dpi)実測3分27秒 | 実測27秒 | 実測16秒 |
エプソンGT-F600今回ついでに購入 | 実測61秒 | 28.7秒(実測25秒) | 実測13秒 |
エプソンPX-A5502年間使用 | 35.7実測39秒 | 実測13秒 | |
キャノンMP-500プリンタとして購入 | 実測88秒 | 実測24秒 | 5.6秒実測8秒 |
キャノンLIDE 60 | 58.9秒 | 21.7秒 | |
キャノンLIDE500V | 70秒 | ||
キャノン5400F | 99秒 | ||
エプソン7400U | 94秒 | 24秒 | |
エプソンGT-X900 | 21.7秒 | ||
エプソンES-H300 | 33.6秒 | 1.4秒 | |
複合機エプソンPM-A950 | 26.6秒 | ||
PM-A750 | 91.2秒 | ||
PX-A650 | 140秒 | ||
複合機キャノンMP-800、830 | 4.6秒 | ||
富士通scansnap枚/分から逆算 | 100秒(1200dpi相当) | 10秒(600dpi相当) | 3.3秒(300dpi相当) |
現在のスキャナはUSB2.0対応だし、600dpiまでなら、速度的には何を買っても実用上の差はない。ただ、1200dpiを時々使う事があるなら、少し注意が必要だったわけだ。
最高解像度3200dpiの機種で1200dpiのスキャンをすると、実際には1600dpiでスキャンし、ソフト的に1200dpiに補間するため遅くなる。
こんな事、普通は買う前には気がつかないよなあ。
8400FVのカタログでは、1600dpiで202秒。実測の3分27秒は、207秒。
ほぼ、カタログどおりの数字だったわけだ。
でも、4年前のスキャナより遅いというのは、かなり悔しい。
実は、閉店改装セールで安くなっていたので、エプソンGT-F600もついでに買っていた。
2年前のモデルだが、こちらは61秒。
まずまずのスピードである。なんとか使い物になりそうなのでホッとした。
GT-F600は最高解像度4800dpiタイプ(1200dpiの4倍)なので、1200dpiでそのままスキャンできるからだろう。
結論としては、1200dpiを頻繁に使うことがあるのなら、3200dpiは避けて、2400か4800dpiの機種を選ぶといい。
DTPでは、画像データをカラーは350dpi、モノクロは1200dpiでという指定が多いから、意外と1200dpiを使うのではないだろうか。
表から推測するに、1200dpiモノクロ最速は、エプソンのES-H300。でもこれはオフィス向けで10万するので、家庭用ならキャノンのLiDE60あたりが手頃でよさそうだ。こうなると、CISタイプも実測したくなる。
しかし、スキャナーばかりあってもしょうがない。
そこで、しばらくプリンター買ってないし、LiDE60相当のスキャナーがついている?と予想される複合機MP-500を買ってみた。
その結果実測した中では、600dpiまで、MP500がモノクロ、グレースケール最速という結果。
しかし、残念ながら1200dpiではさほど速くはなかった。
モノクロとカラーでも比較してみた。カラーは24ビット。
カタログから予想されるスキャナーの読み取り速度
モノクロVSカラー A4原稿の場合
スキャナー機種名 | モノクロ | カラー | 傾向と予想? |
キャノンD1230U4年間使ったもの。 | 予備動作33秒+17秒(300dpi)予備動作33秒+56秒(600dpi)予備動作33秒+107秒(1200dpi) | 予備動作33秒+18秒(300dpi)予備動作33秒+58秒(600dpi)予備動作33秒+6分(1200dpi) | 予備動作は、続けてスキャンすれば省略されるので、早くなる。グレースケールはモノクロと同速度。用途によってはまだまだ充分使えそう。 |
キャノン8400FV今回購入したもの。 | 実測16秒(300、400dpiとも)実測27秒(600、800dpiとも)実測3分27秒(1200、1600dpiとも)カタログ202秒(1600dpi) | 実測17秒(300、400dpiとも)実測30秒(600、800dpiとも)実測3分27秒(1200、1600dpiとも)カタログ202秒(1600dpi) | 800dpiまではとても速い。カラーとグレースケール、モノクロほぼ同速度。ただ、1200dpiだけがやたら遅くD1230Uにも負ける。 |
エプソンGT-F600今回ついでに購入 | 実測13秒(300dpi)カタログ28.7秒(実測25秒)(600dpi)実測61秒(1200dpi) | 実測19秒(300dpi)カタログ28.7秒(実測30秒)(600dpi)実測2分37秒(1200dpi) | 速度的には、全体にバランスがとれている。グレースケールはカラーと同速度。そのため1200dpiでは、D1230Uより遅い。 |
PX-A550 | 実測13秒(300dpi)カタログ35.7秒 実測39秒(600dpi) | 実測41秒(300dpi)カタログ105秒 実測2分47秒(600dpi) | 2年前から使用。普段は解像度600dpiのこれだけで事足りる。カラーがカタログより遅いのは、パソコン(P3-600Mhz)かUSB1.1の性。転送が間に合わず、スキャンがギクシャクする。 |
キャノンMP-500 | カタログ5.6秒 実測8秒(300dpi)実測24秒(600dpi)実測88秒(1200dpi) | カタログ16.5秒 実測20秒(300dpi)実測72秒(600dpi)実測4分24秒(1200dpi) | 家庭用としては、モノクロなら600dpiまで最速レベル。グレースケールはモノクロと同速度。カラーはなぜこんなに遅い? |
キャノンLIDE 60 | 21.7秒(600dpi)58.9秒(1200dpi) | 45秒(600dpi)178秒(1200dpi) | モノクロ中心なら、一番いい選択かも。カラーは2~3倍遅そうだ。 |
キャノンLIDE500V | 70秒(1200dpi) | 146秒(1200dpi) | これもCISタイプでカラーが遅い。薄型でフィルムスキャンが出来るのがメリット。 |
キャノン5400F | 99秒(1200dpi) | 99秒(1200dpi) | カラーとモノクロが同速度のようだ。1200dpiカラーは一番速いかも。2400dpiのスキャナーは速度的にはバランスがよさそうだ。カラー原稿取り込みがメインなら、これが一番よさそう。 |
エプソン7400U | 24秒(600dpi)94秒(1200dpi) | 56秒(600dpi)112秒(1200dpi) | カラーが遅いけど、実用に差し支えない。普通の使用なら充分。 |
エプソンGT-X900 | 21.7秒(600dpi) | 21.7秒(600dpi) | 高級機だけあって、通常のスキャンもかなり速そうだ。 |
エプソンES-H300 | 1.4秒(300dpi)33.6秒(1200dpi) | 4.2秒(300dpi)68.7秒(1200dpi) | 仕事で使うなら、これが一番かもしれないが、速さを追求すれば、画質は犠牲になるのかも。 |
複合機エプソンPM-A950 | 26.6秒(600dpi) | 26.6秒(600dpi) | 速そうだけど、デカイよね。 |
PM-A750 | 91.2秒(1200dpi) | 280秒(1200dpi) | キャノンのCISより少し遅いようだが、300、600dpiは結構速そう。 |
PX-A650 | 140秒(1200dpi) | 420秒(1200dpi) | スキャナーはプリンターのおまけと考えればいい。一万円切ったら買おうかな。 |
複合機キャノンMP-950 | 9.4秒(400dpi) | 9.4秒(400dpi) | 8400FVと同解像度のスキャナだが、コピー対策で400dpiを高速化しているのかも。 |
複合機キャノンMP-800、830 | 4.6秒(300dpi) | 4.6秒(300dpi) | 5400Fと同解像度のスキャナだが、コピー対策で300dpiを高速化しているのかも。カタログ数値上は最速。 |
富士通scansnap枚/分から逆算 | 3.3秒(300dpi相当) 10秒(600dpi相当)100秒(1200dpi相当) |
? | 大量の書類相手では、ベストチョイス。よく売れてるみたい。画質はどうなんでしょう。 |
CISスキャナは、1ライン読むのにカラーではR、G、Bそれぞれで光を変えて読むので、理屈では、カラーはモノクロの3倍遅いはずだ。実際、実測したものはカラーが3倍遅い。300dpiでは気にならないが、600、1200と解像度があがれば、その差は大きくなる。
MP500のスキャナーは、LiDE60あたりと同程度の性能かと思ったが、どうもチューニング?が違うようだ。複合機の大事な機能である、コピーのスピードを上げるため、300dpiは高速で、1200dpiは逆に遅い。
CISタイプのスキャナーは、現在では、薄型、バスパワー駆動(電源いらず)が商品の売りでもあるので、どうしても使える電力に限りがある。しかし、複合機はAC電源だからその心配がなく、スキャナーの高速化も容易な気もする。
いいかげんな憶測はともかく、事実として、MP500の方がモノクロ、グレーの300dpiなら高価なフラットベットスキャナーより、速い。これはこれでたいしたものである。
CCDスキャナは、モノクロでもカラーでも一度に読み取ることができるから、理屈では、モノクロでもカラー読み取り速度は同じにできる。
しかし、読み取ったデータの量が全然違うから、データの処理や転送時間に差がでてくるはず。ところが実際は、600dpiまでは、カラーもモノクロもほとんど速度差がない。対応が分かれるのが1200dpi。
8400FVでは、モノクロ、グレースケール、カラーが同速度。
1600dpiからソフト的に変換しているから、遅いのは仕方ないにしても、モノクロが3分以上とは遅すぎる。
F600では、1200dpiモノクロは、62秒。ちゃんと対応している。
ただ、グレースケールはカラーに合わせたため残念ながら遅い。
どちらも開発の力点はフィルムスキャンに向いているのだろう。だから、モードによっては、安価なスキャナや古いスキャナにスピードで負けてしまう場合がある。
メーカーがカタログで公表する、スキャナーの読み取り速度。
これはきっと、そのスキャナーの一番の得意な解像度を表示しようとしているのだろう。
全くまとまりのない文章になってしまった。
そろそろ強引に終わりにしよう。
強引な結論。
とにかく一台欲しいなら、4800dpiのCCDタイプが、なんでも出来てバランスがいい。
3200dpiタイプでは、よく使う解像度300、600dpiがソフト補間になってしまう。
300dpiがメインであれば、安価なCISタイプ複合機がスキャンスピードが速いのでおすすめ。MP-500。
どうしても800dpiを使う必要があるなら、8400FV。
1200dpiモノクロを使う必要があるなら、エプソンES-H300、エプソン4800dpiタイプ、キャノンLiDE60。
1200dpiグレースケールを頻繁に使うなら、キャノンLiDE500FV、60あるいは複合機MP500、450、170。
1200dpiカラーを頻繁に使うなら、キャノン5400F。
最近では、スキャナーはプリンターにおまけでついてくる。
一年落ちのプリンター(複合機)は、最後は投げ売り状態になる。
普通に使うにはこういうので充分である。
単体でのスキャナーでは、scansnapのような、大量高速取り込みか、フィルムスキャナーを追い越せるような、高級機路線がすこし勢いがある程度。フィルムスキャナーもデジカメ一眼レフが低価格で普及すれば、さらに需要は落ち込む。売場面積も縮小されつつある。
生き残るのには、やはり、スピードアップしかないのでは?まあ、今でも充分速いけど。
4,5年後の次回の購入時には、どんなスペックになっているのか。楽しみにしていよう。(2006/8)
まだ2年しかたってませんが、スキャナの高速化はさらに進んでいるようです。LIDE200や複合機のCISは低解像度ではとても高速です。CISでは、カラーのスキャンは速度が遅いはずですが、低解像度(300dpi)ではモノクロとほぼ同じ速さになっています。こういった進化もあまり話題にならない程、単体としてのスキャナは需要がないのでしょう。
ADF付の複合機も増えてきました。ブラザーのA3スキャナ&A3プリンタ付の複合機は5万円程度ですから、かなりお買い得な気もします。だいたいA3スキャナは10万以下では新品は買えないですからね。先日、ローソンへコピーにいったら、スキャナデータをメモリーに保存できるサービスをやっていました。30円だったかな?A3カラー600dpiで試してみました。スキャンそのものはあっという間(1、2秒)でメモリー書き込みに10秒ぐらい。保存はJPGしか選べないしマニュアル調整も濃度を選べるだけ。寸法精度はさすがにオフィス用ですから出ているようですが、画質は、ノイズがはいっているコンデジっぽい感じでした。でも30円ですからね。(2008/10)
iPad購入から自炊作業(手持ちの本のpdf化)が増え、このページに辿り着きました。
残念ながら古い実験データだったんですね。
うちのスキャナーは5年程前のものなので、買い替えを考えているのですが、
メーカーでも販売店でも比較しようがないので困っています。
スキャンボタンを押してから、スキャンし戻ってきて、再度押せる状態になるまでの時間を比較したいのですが・・・
コメント by いっちぃ — 2010年10月23日 @ 9:13 AM
本をバラせればADFが使えますけど、そうでなければフラットベット。最近のでは300dpiで10秒程度でしょうかね。速度はアップしているとは思いますが、お使いのスキャナーがUSB2.0以降であれば、あまり変わらないかも。まあ、ページ数が増えれば1秒の違いが数分になりますけどね。
ADF以外での最速はGT-x820でしょう。
http://www.epson.jp/products/colorio/scanner/sokudo.htm
コメント by junky — 2010年10月23日 @ 10:18 AM
RESありがとうございます。
GT-x820調べてみたのですが、結構高いですね。
予算的にはその半額・・1万円が限度でしょうか。
ちなみに私の今使っているのは「CanoScan N1220U」というモデルなのですが、200dpiでA4読み取りが
1分20秒ほどかかります。
(ボタンを押してから、再度押せるような状態になるまで)
・・調べたら10年前の機種でした(泣)
コメント by いっちぃ — 2010年11月13日 @ 9:13 AM