インクのDIY
さりげなく3月に新発売された詰め替えインク。エレコムの詰め替えインク:THE-31KIT 。どこにも書かれてないけど、パッケージ写真では顔料インクのようだ。もうすでに販売していない製品であるA550やV600専用インクをなぜ今頃?という気もするが買ってみた。
このタイプの詰め替えキットは初めてだったが、とても使いやすく、よくできている。インクボトルの構造も、パイプをつければそのまま連続供給に使えそうな形。普通紙での印刷も滲まずいいかんじ。さらに水道水にさらしてもインクが流れない。やっぱり顔料インクのようである。シアンのみ僅かに一部滲んでしまったが、これは顔料の彩度不足を補うために、染料を混ぜているのかもしれない。
もちろん、A650やV630でも詰め替え使用可能だから、普通紙メインの使い方なら、おすすめである。
さて、様子がわかったところでG800に4色セットして使ってみた。特に問題なし。G800は6色インクなので、ライトシアンとライトマゼンダもこの詰替えインクで作ってみた。といってもインクと精製水の比率は1:1で2倍に希釈しただけだ。プリントは出来たがこれではまだ全然インクが濃すぎた。
その後、グロスオプティマイザとブラックインクで、6色グレーを作ってみたが、グロスの樹脂分がよけいな事をしているようである。何かインクを薄める適当なものはないだろうか?精製水とグリセリンだけでいいのか?顔料インクには界面活性剤も入っているみたいだし。さりとて1から調合する知識も気力もない。
その後、ホームセンターや画材屋を妙な目的で徘徊の末、ついに見つけたのである。プリンタヘッドのクリーニングにもインクの薄め液にも使える万能液。それが、ホルベイン(絵具)のデュオ ブラシ クリーナーである。
このクリーナーは、ホルベインのDUO(界面活性剤入りの油絵の具)用の筆洗い液である。
成分は水性で界面活性剤とグリコール類などが入っている。ちょっとトロンとした感じと、振るとすぐに泡立つところがそっくり。そして何より、エプソンの顔料インクと同じ匂いがするのだ!
最初に、純正染料インクで試してみた。ちょうどライトシアンとライトマゼンダが終わってしまったので、ジャンクについてきた古いカートリッジから、インクを抜き取り、キッチンスケールで計りながら希釈した。クリーナーはエプソンの純正インクよりもトロミが強い感じがしたので、精製水で2倍に希釈して使ってみた。
ライトシアンはインクと薄め液が1:2、ライトマゼンダは1:3でだいたい純正と濃度が合う。ライトシアンは全く同じ色味になった感じだが、ライトマゼンダは純正の方がピンクっぽさがごくわずか強い。もともとの染料配合が違うのかもしれない。
プリント結果は、全く問題ないといっていいと思う。シビアに色を出すのは難しいかもしれないが、それはノーマルインクでも同じ事だ。エプソンの6色インクプリンタは、頻繁に使えば、イエローとライトマゼンダ、ライトシアンが先になくなる。たまに使用するだけなら、クリーニングに消費され、6色均等に減る!という性格?をもっている。ついつい割安だからと6色セットを買うとシアン、マゼンダ、ブラックが余るのだ。この余ったインクでライトインクが作れれば、かなり経済的である。この薄め液は、希釈すれば1リットルで500円ぐらいのものだからインクに比べればただのようなもの。シアンからライトシアン3本、マゼンダからライトマゼンダが4本作れるのだから、かなりお得。しかも、薄めても純正インクだから、他社の詰め替えインクより耐久性が期待できるし、修理に出してもたぶんバレナイ。
コストは下げたいけれど、クオリティも保ちたい向きには、ピッタリである。
私はこの先、インクジェット用にライトシアン、ライトマゼンダ、ライトグレーなどのインクカートリッジは多分買わない。買うのは4色だけで充分だ。あとは作れるとわかったから。
さて、このクリーナー、ヘッド詰りのときのクリーニング液としてはどうか?
これは間違いなく最適と断言できる。
もともとの成分がインクそのものによく似ているので、ヘッドを傷める心配も少なく、界面活性剤は強力だ。
コート紙に綿棒でフォトブラック(顔料)のインクをこすりつけよく乾かし、いくつかの液体でコスってみた。
精製水、ベンジンはまるでダメ。エタノールがわずかにインクをこすり取れる程度。しかし、このデュオクリーナは見事にインクを溶かした。さらに、コート紙まで崩れてきた。スゴイ。
ちょっと、思いつきで同じ顔料インクでもコスってみた。もちろん、黒くはなるが、最初に書いた線はきれいに溶けてなくなっている!さらに、エプソン純正染料インクでもコスってみた。これでもインクが落ちた!

左がアルコール。右がクリーナー。

左が、フォトブラック。右は、染料インクイエロー(32タイプ)。
考察するに、界面活性剤の作用が特におおきいのだろう。さらに他の保湿成分や溶剤の力で、顔料インクは溶けた。顔料を分解する力と分散させる力がこのクリーナーはとても強い。そして、その成分と同じものが顔料インクそのものにも入っている。そして染料インクにも。だから、インクはインクによって溶けたわけだ。
灯台もと暗しといったところだが、クリーニングの為にインクを大量につかうのはもったいない。
いままで、何回かヘッドクリーニングはエタノールでやっていて、一応の成果はでていたのだが、コート紙上のインクは溶かせなかった。プラスチックにインクを擦りつけたものなら、アルコールでも精製水でも簡単に落ちる。プリンタヘッドの中はインクの染み込まない素材であり、インクには顔料や樹脂成分の他に、界面活性剤や保湿剤が残っているから、アルコールや精製水でクリーニングしても、これらの作用であるていどは復活するのだろう。しかし、コート紙の上では、界面活性剤や保湿成分は紙に浸透してしまい、表面には顔料と樹脂が残る。樹脂は乾燥すると水やアルコールに溶けなくなるので、歯がたたなかったようだ。この辺はアクリル絵具と性質がよく似ている。
完全に乾いていたり、固まりになっているインクがあったらアルコールでは回復は難しい。しかし、そのようなしつこい詰りにも、このクリーナーは効果を期待できる。インクに浸透して分解するだけでなく保湿するから、寒天を水で戻すようにインクをやわらかくして溶かす効果を期待できる。
考えてみれば、インク詰りでクリーニングを繰り返してダメなとき、一晩放置すると復活するのは、インクがインクを溶かす力によるものなのだろう。
目詰まりの予防
このクリーナーはこのような使い方にも有効と思われる。
顔料プリンタは廃インクタンクへつながるチューブが詰りやすい。チューブが詰まるとヘッドへのエアの逆流がおこり、いくらクリーニングしてもヘッドがエアを噛んでインク詰りが解消されない。
この予防として、インク交換の際にヘッドキャップに、このクリーナーを少量垂らしておく。こうすれば、チューブの中のクリーニングが出来て、詰りを予防できそうだ。長期間プリンタを使わないときも、ヘッドキャップに垂らしておけば、保湿効果で詰りを予防できそうだ。使いおわったインクカートリッジにクリーナーを詰めてリセットしておけば、いつでもクリーニング専用カートリッジとして使える。プリンタそのもののクリーニングにも、インクの詰め替えで汚れてしまった器具の洗浄にもピッタリといえる。
ご注意
デュオブラシクリーナーにて、エプソン顔料インクを希釈したところ、沈殿をおこし、使い物にならなくなりました。顔料インクの希釈には向きません。精製水やグリセリンなどでは分離しないので大丈夫かもしれません。最近は古い型のプリンタの純正インクはオークションやリサイクルショップで安く買えるので、それで済ませています。(2008/10追記)→純正インクのアウトレット インクのジット
CANONのBCI-321のブラックをデュオ ブラシ クリーナーで薄めて,グレーインクにしようと考えています.
今のところ,3倍くらいに希釈してみようと思うのですが,他に注意する点はありませんか?
よろしくお願いします.
コメント by グレーインク — 2011年6月28日 @ 12:47 PM
キャノンのプリンターには、デュオブラシクリーナーは、使わないほうがいいですよ。まあ、エプソンにもですけど。キャノンは水を熱で瞬間蒸発させるプリントヘッドですから、余計な成分が、入ってないほうがいいでしょう。精製水とグリセリンだけで様子をみたらどうですか。
コメント by junky — 2011年6月28日 @ 1:59 PM
早速の返信ありがとうございます.
キャノンにはデュオブラシクリーナーは使わないほうが良いんですね.
ご指摘ありがとうございます.
試しに,精製水とグリセリンで希釈してみます.
コメント by グレーインク — 2011年6月28日 @ 2:27 PM